プロフィール
藤田医科大学 歯科口腔外科で長年、研究・臨床・教育に携わり、准教授を務める。退職後も非常勤講師として大学教育に関与しつつ、現在は週1回、こじまデンタルクリニックで診療を担当。親知らず抜歯・粘膜疾患・顎関節症などの口腔外科領域を中心に、高齢者や全身疾患を抱える患者の治療にあたる。
大学病院で臨床と教育に携わっていた頃から、私は“大学病院ほどではないが一般開業医では難しい”症例が一定数存在することを実感してきました。持病をお持ちの高齢患者さんや、粘膜の異常、難易度の高い親知らずの抜歯など、対応の見極めが問われる場面です。こじまデンタルクリニックでは、院長も病院歯科の経験があり、医科的な配慮や判断を踏まえて診療方針を組み立てます。そのため、これまで大学病院に紹介されがちだった症例でも、地域のクリニックという“身近な場所”で適切に評価し処置まで担えることがあります。「まずここに相談すれば大丈夫だ」と感じていただける存在でありたいと思っています。
大学病院と街のクリニックの“中間”で専門性を活かす
私が担当するのは、一般歯科も含みつつ、とりわけ口腔外科領域の症例です。他院や医師からの紹介で受診される方も多く、必要に応じて私や院長が判断し、治療を完遂するか、より高次の医療機関へ繋ぐかを丁寧に見極めます。高齢化が進むなか、全身疾患をお持ちの方の歯科治療は日常的なテーマになりました。だからこそ、診療室の中だけで完結させず、生活背景や服薬、体調の波まで想像しながら治療計画を引くことを大切にしています。ここは大学病院ではありませんが、大学病院で培った視点を地域で生かし、患者さんにとって過不足のない医療を届ける“中間的な場”として機能していると感じます。
“歯を見る前に、人を見る”。若手に伝えたい視点
技術や知識はもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。たとえば「今日は少し不安が強そうだ」「このスケジュールで処置して大丈夫か」といった小さな変化に気づく観察眼や、全身状態への想像力が、治療の質を大きく左右します。私は学校で講義や指導にも携わっていますが、歯科衛生士・歯科助手の方には、手技の上達と同じくらい“人を診る”姿勢を身につけてほしいと伝えています。わからないことを素直に質問し、チームに頼ることをためらわない誠実さは、大きな成長に直結します。
忙しすぎないから、学べます。相談のしやすさと教育のこれから
当院は患者さんが多い一方で、時間に追われて作業化してしまうような診療スタイルではありません。先輩スタッフや歯科医師にすぐ相談できる空気があり、一人ひとりに向き合う余裕を確保できています。院長はITに明るく、評価や業務の見える化にも前向きです。教育制度は今後さらに整えていく余地がありますが、「困ったら頼ってください」で終わらせず、学ぶプロセスを仕組みとして支える体制を、現場の実感に基づいて磨いていきたいと考えています。
次の一歩を考えるあなたへ
大学病院や市民病院で培った経験を地域で生かしたい方、あるいはブランクからの復帰を目指す方にも、ここには挑戦の余地があります。完璧である必要はありません。「学びたい」と言える素直さがあれば、日々の診療のなかで専門的な判断や処置を経験し、確かな力へと変えていけます。大学病院でやってきたことを、街のクリニックという近さで提供する──その役割に共感してくださる方と、一緒に地域の安心を支えていけたら嬉しく思います。